2009年秋~おっくんの涙~ [日記]

今年の10月の末に、母がおっくんの所(病院)へ行くと言うので、ふと以前読ませて反応がなかった菊田まり子さんの「いつでも会える」をもう一度見せて欲しい、と伝言しました。

以前のブログでも何度か書いていますが、おっくんは交通事故の後遺症で「喜怒哀楽」のうちの「哀」が欠落したままの状態なのです。

家族に会えて「嬉しい」と感じて笑ったり、からかい過ぎたり、くすぐり続けたりと嫌がらせをすると「怒った」り、友達がお見舞いに来てくれると「喜んだ」り。

一通りの人間らしい感情は戻ったにも関わらず「哀しい(悲しい)」と感じる感情が欠落していたのです。

例えば、「親戚の○○伯父さんが亡くなっちゃったんだよ」と話しかけると「・・・悲しい」とつぶやいて伏し目がちに下を向いたりするのですが、本当に心から悲しいと感じているようには見えませんでした。

そして大人が読んでも涙を誘うような「いつでも会える」という子供向け絵本を見せても、何も反応しませんでした。以前(事故前)のおっくんなら、間違いなく涙を流すはずなのに・・・と。

 

けれど、おっくんの「哀」はある日突然のように回復したのです。

絵本を買った事すら忘れていたのですが、母も私に頼まれるがままに病院へ行きました。

最初に表紙を見せて「おっくん、この本わかる?」と聞くと、「・・・分からない」と答えました。

そして表紙をめくり、最初は抑揚も無く1ページあたり2~3行程度の短い文章を目で追っていました。

3~4ページ目に差し掛かった時に、母曰く、「おっくんの顔が急に変な表情で歪んだようになって、瞬く間に涙が溢れ、大声を出して号泣した」と言うのです。

人目をはばかる事なく、それは紛れもない号泣。わんわんと子供のように、おっくんは泣き出しました。

「いつでも会える」は、飼い主の小さな女の子であるミキちゃんと子犬のシロの心の交流を描いた、とても短いシンプルな絵本です。

ミキちゃんがある日突然シロの前からいなくなり、暫くしてシロはミキちゃんが亡くなってしまった事を知ります。毎日毎日、シロはミキちゃんを探し求めて、悲しみに暮れるのですが・・・、ある日シロは瞼を閉じれば夢の中でいつでもミキちゃんに会える事に気づくのです。

この話はとてもシンプルですが、幼い子供にとって「死」という理解し難いものについて、とても良く表現された内容ではないかと思います。実際に多方面でも同様の内容で高く評価されている絵本なので、ご存知の方や読んだ事のある方もいるのではないかと思います。

この本を以前おっくんに見せた時には何の反応もせずに、ただめくられるページの字面を目が追っているだけでした。

でも、今回はまるで違いました。この本を読んでおっくんが泣いたのです。それも号泣したのです。

一緒に本を読ませていた母もあまりの感激におっくんと大泣きしてしまったそうです。

 

「喜怒哀楽」が戻る事は、私にとっても他の家族みんなの切なる願いの一つだったので、本当に心の底から喜びました。

 

菊田まり子さんには、この素晴らしい絵本を描いてくださった事に、この場を借りてお礼を言いたいと思います。本当にありがとうございました。

 

 ちなみに、前回のブログでおっくんの記憶障害について触れましたが、それも日進月歩で回復の兆しを見せています。

と言うのも、この「いつでも会える」で号泣してから2週間ほど経った11月に、私が病院へ行った際、もう一度絵本を見せました。

表紙を見せて「何の本だか分かる?」と聞くと、おっくんは「・・・分かる」とだけ答えました。

そして今回は、声を出して絵本を読ませたのです。おっくんは、事故の影響できちんと話す事がままなりませんが、呂律が回らないまでも何を言っているのかは、かろうじて聞き取れます。

表紙をめくり、最初のページの文章を読ませました。

”ボクはシロ” ”ミキちゃんのイヌ”

この一言二言を口にしたとたんに、おっくんの目は涙でいっぱいになって、泣きながら読み進めて行きました。

つまり、この本のストーリーがどういう内容だったのかを記憶していて、最初のページでそれを理解した上で涙が出て来てしまったのです。

 

高次脳機能障害によって、記憶障害が永久に残るケースもあると医師からは聞かされていますが、私は絶対に回復するものと確信しています。

だって、”ボクはシロ” で泣けますか?

この事実は、おっくんの脳の中の回復を明らかに物語っていると思うのです。

 

これからもっともっと、おっくんの脳に少しでも刺激を与える事ができるように模索して行こうと思っています。


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